訪問リハビリテーションの実際 ~ ロコモティブシンドローム ~
皆さんはロコモティブシンドロームという言葉をご存じでしょうか?
ロコモティブシンドロームとは、2007年に日本整形外科学会により提唱された概念で、「運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態」になる事です。
ロコモティブシンドロームは「骨粗鬆症」「変形性関節症」「脊柱管狭窄症」等の運動器疾患により身体を動かすのに必要な体力やバランス能力などを失ってしまう事が主な原因です。
また運動器疾患が無くても、加齢や運動習慣のない生活、活動量の低下により身体機能は衰えてきます。
ロコモティブシンドロームを発症するには3つの段階があると言われており、
①運動器(骨、関節、筋肉、神経)の衰え
②歩行困難
③介護が必要な状態と進行していきます。
ロコモティブシンドロームの可能性がある方は転倒のリスクが増加し、怪我をする可能性も高くなります。
以前にもご紹介しましたが、高齢者の転倒場所は屋外よりも自宅等の室内が多いとの報告があります。ご自宅での生活を安心して送れるように、ロコモ度を知り、転倒を予防していくことはとても重要です。
今回はロコモ度を簡易的に測る方法として、立ち上がりテストをご紹介します。
- 立ち上がりテスト
片足または両足で、決まった高さから立ち上がれるかで、下肢の筋力を評価します。
【テスト方法】
台は40cm、30cm、20cm、10cmの4種類の高さを用意し、両脚または片脚で行います。
基本姿勢は、反動をつけないように胸の前で腕を組みます。
①両脚40cmでテストします。
40cmの台に両腕を組んで腰かけます。両脚は肩幅くらいに開き、床に対して脛がおよそ70度(40cmの台の場合)になるようにして、反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間保持します。
※できなかった方はロコモ度3です。できた方は②以降のテストに進みます。
②片脚でテストをします。
片脚を上げて膝は軽く曲げます。反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間保持します。
反対側の脚でも同様に行います。
<どちらか片方の脚でも40cmができなかった場合>
両脚での立ち上がりをテストします。 30cmから始め、 10cmずつ低い台に移り、両脚で立ち上がれた一番低い台がテスト結果です。
<どちらも片脚40cmができた場合>
片脚で30cmから立ち上がりテストを行い、10cmずつ低い台に移ります。左右とも片脚で立ち上がれた一番低い台がテスト結果です。
【ロコモ度結果判定】
<ロコモ度1>
どちらか一方の脚で40cmの台から立ち上がれないが、両脚で20cmは立ち上がれる
→移動期の低下が始まっている状態です。筋力やバランス力が落ちてきているので運動習慣をつけ、バランスのとれた食事を摂るようにしましょう。
<ロコモ度2>
両脚で20cmの台から立ち上がれないが、30cmの台から立ち上がれる
→移動機能の低下が進行している状態です。自立した生活が出来なくなるリスクが高くなっています。痛みを伴う場合は整形外科専門医の受診をおすすめします。
<ロコモ度3>
両脚で30cmの台から立ち上がれない
→移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態です。自立した生活が出来なくなるリスクが非常に高まっています。何らかの運動器疾患の治療が必要になっている可能性があるため、整形外科専門医による診療をおすすめします。
※参考資料:日本整形外科学会公式ホームページ
健康寿命を少しでも長くし、ご自宅での生活を安心して送れるよう、ご自身やご家族のロコモ度を知って、できる範囲から運動習慣を身につけましょう。
また、痛みや何らかの障害が発生した場合には、我慢せず、整形外科専門医へ受診し、出来るだけ早く治療を始めるようにしましょう。
訪問リハビリ
理学療法士 松浦 弘行