臨床につなげる基礎学問 Vol.1
私たちセラピストは臨床を行う上で、クリニカルリーズニング(臨床推論)を繰り返しています。ここでいわれている推論とは、患者様の訴えや症状、動作などの多くの情報を、科学的な根拠に基いて解釈し、鑑別や判断をする過程を指します。
科学的な根拠に基づく解釈をする上で、最も基盤となる学問が「解剖学」「生理学」「運動学」の3分野と言われています。この3分野の基礎学問と臨床をしっかりと結び付けることで、より質の高いクリニカルリーズニングが可能となります。
しかし、この基礎学問と臨床を結び付ける作業が最も難しいと感じています。
そこで、この「臨床に繋げる基礎学問」のシリーズでは、勉強をしていく中で学んだ臨床につながることや、日々の臨床を行う中で感じた疑問点を、基礎学問と結び付けて伝えていきます。
第1回は前置きが長くなってしまったため、簡単に足関節についての話をしていきたいと思います。
既にご存じの方も多いかもしれませんが、関節可動域表示ならびに測定法が今年の4月に改訂されました。
その中でも特に、足関節・足部における「外がえし」と「内がえし」、「回外」と「回内」の定義が見直されました。今まで国際的な定義が異なり、文献の翻訳や引用において混乱を生じる原因であったため、改定されることとなったとされています。
「外がえし」と「内がえし」は前額面での運動、「回外」と「回内」は水平面・矢状面・前額面の3平面での複合運動と定義されました。「回外」は、「底屈+内転+内がえし」の複合運動であり、「回内」は「背屈+外転+外がえし」の複合運動を指します。
複合運動である回外や回内の可動域に制限がある場合、どの構成要素においてより制限があるのかを把握することが、最適なアプローチを行うための一助になります。
言葉の定義をしっかりと理解した上で、なぜそのアプローチをするのかという目的を患者様と共有することはラポール形成にも繋がります。
医学は確実に進歩しており、私たちセラピストはその進歩についていく必要があります。
日々臨床をこなすだけでなく、進歩についていくための研鑽をしっかりと積み、質の担保された介入を目指しましょう。
引用文献
関節可動域表示ならびに測定法改定に関する告知(2022年4月改定):日本リハビリテーション医学会ホームページ
外来リハビリ
理学療法士 佐々木優太