訪問リハビリテーションの実際 ~ リスク管理 ~

訪問リハビリでは、来訪時に「お元気ですか?」「体調はいかがでしょうか?」とお声掛けして、ご本人から体調面を確認させて頂くと共に、様々な要素から健康面のリスク管理を行っています。

そこで、今回はリハビリの際に考慮しているリスク管理についてご紹介致します。

 

①意識レベル

普段よりもぼんやりしている、目を閉じてしまいやすい、呂律が回っていない等、表情や会話の反応から覚醒の状態を判断し、当日リハビリが行える状況か、病院に連絡する必要があるかといった緊急性の判断に利用しています。

 

②体温

気温や室温により体温が上昇する場合もありますが、基本は37.5°以上は発熱として判断しています。お子様の場合は、元々体温が高めの方もいるため、ご本人の様子やご家族からの情報をもとに複合的に判断させて頂き、必要に応じてクーリングを行っています。

 

③血中酸素飽和濃度(SpO2)

外見上の特徴やパルスオキシメーターという専用機器で計測して、血中酸素濃度の低下(チアノーゼ)が生じていないかを確認しています。
外見からは、顔、唇、肌、爪の色が青紫がかった色になっていないか?

機器では、機器により測定範囲に変動はありますが概ね70~100%までの数値で表示され、息切れや呼吸不全の可能性を確認しています。主にリハビリ開始時や運動で息切れが生じた際に計測し、表出された数値からどれ位の酸素が身体に運ばれているかを考慮してリスク管理を行っています。

 

④脈拍

パルスオキシメーターで計測、手首・足首や首の血管の触診で計測して、一分間の心拍の早さ、リズムを確認しています。
一般的にリハビリの中止基準が定まっており、リハビリ前の脈拍が120回/分以上、運動中の脈拍が140/分を越えた場合は運動を中止させて頂きます。

 

⑤血圧

心臓から送り出される血液が血管を押し出す圧力を、血圧計を使用して計測します。

安静時の血圧が、収縮期血圧(上)が200mmHg以上または、拡張期血圧(下)が120mmHg以上の場合には、血管を押し出す圧力が強すぎるためリハビリを中止させて頂きます。

また、運動中に収縮期血圧(上)が40mmHg以上または、拡張期血圧(下)が20mmHg以上上昇した場合、身体に対する負荷が強いと判断しリハビリを中止させて頂きます。

 

これらに加えて、疾患や怪我、手術歴などを考慮して対象者様の体調を管理した上でリハビリを行なわさせて頂いております。

 

これまでお話ししたリスク管理を基にして、実際のリハビリ場面での事例を紹介させて頂きます。

・安静時の拡張期血圧が115mmHgの場合

血圧をお薬で管理しているおり、安静時の拡張期血圧が115mmHgでしたが、会話の応答良く、表情も良いため、ベッドに横になった状態から介入を開始しました。その際、運動により心臓への負荷がかからないように、横になったままでストレッチや筋力訓練を行う場面がありました。

 

・運動時のSpO2が92%になる方の場合

肺が硬くなってしまい安静時のSpO2が95~96%でしたが、室内歩行後に息切れが生じ、唇が薄紫色に変化、SpO2が92%となる場面がありました。その際は、呼吸法をお伝えし、ゆっくりと息を整えSpO2が96%に回復するまで休憩をとりながら訓練を行いました。

 

訪問リハビリ

作業療法士 佐竹 正史